「いやー、やっと課題終わったよぉ~。 ありがとう有咲」
「ちょっ、おま……いちいち抱きついてくるな、暑苦しい」
練習の前にみんなで課題を終わらせてしまおうということになったから私は香澄に教えていたが課題が終わったら香澄がまたいつものように抱きついてきた。
沙綾たち他の3人は先に終わっていたから休憩のときに食べるお菓子や飲み物を買いに行っている。
あっそうだ、みんなが帰ってくるまで練習してよとギターを取り出してチューニングを始める香澄。
「……なんだよ、誰もいないんだから」
「えっ、有咲何か言った?」
こいつはいつも急なんだよ、さっきみたいにいきなり抱きついてきたりさ。
初めて会ったときだってうちの蔵に不法侵入するし、ギターを勝手に持って行くし、人の家に上がってご飯食べてるし勝手に部屋にはいってくるし無理やりバンドやらせようもされたし。
今回も急にライブやろう、新曲作ろうってきかねぇしさ。
でも悪いやつじゃないのは一緒にいてすぐわかった、ギターを落としてしまったときは泣いて謝ってくれたし、いきなりライブハウスのステージできらきら星歌い出したときは何やってんだと思ったけど香澄なりにグリグリがくるまでなんとか引き延ばそうと考えたんだろう。
それに香澄と一緒に学校に行ったりバンドやったりして、友達もできたし毎日が楽しくなった。
そうしてるうちにいつのまにか香澄を好きになってたんだ。
「うーん難しいなぁ。 あとでおたえに聞いてみよ」
そう言ってギターの練習をしている香澄。
ギターに夢中で私の事なんて目に入っていないみたいで。
なんだよ、せっかくの二人きりなのに……。
「なぁ、香澄」
「何、有咲?」
顔を上げた香澄の首筋にキスした、しっかりと痕が残るように。
「香澄、お前のことが好きだ。 友達としてじゃなくて」
……突然の私の行為で香澄は顔を真っ赤にして動きを止めてしまった。
あの、えっと……とひたすら繰り返している。
「ただいま、有咲買ってきたよ」
香澄からの返事を聞く前に三人が帰ってきてしまった。
「ねぇ、香澄顔を赤いけどどうしたの?」
「……なんでもないよ、いやぁちょっとここ暑くってさぁ」
「香澄ちゃん、首のところ赤くなってるよ?」
「……えっ、さ、さっき虫に刺されちゃってさ」
痒くって痒くってと言いながらあからさまに誤魔化している。
「……ふーん、虫さされねぇ。 香澄ちょっとこっちきて」
香澄が自分の前に来たところで沙綾は香澄の首筋にキスをした、しかも私がつけた痕を上書きするように
「沙綾?」
「沙綾ちゃん!?」
「いやぁ、だってこの部屋に悪い虫がいるみたいだからさ」
「例え有咲だって香澄は譲れないよ」
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