あたしは今、長期任務が終わり家路についている。
フェイトさんの下で補佐官として経験を積み、実際に執務官になった後もいくつかの事件を担当したが今回は半年以上掛かった。
船が着いた後、局に報告書などの必要書類を提出し帰路に着いたときにはもう外は暗くなってしまっていた。
部屋の前に着き、鍵を開けるといつも今回も帰って来ることが出来たんだと実感する。
執務官という役職柄いつ任務で命を落とすかわからないのでこうして帰って来られたので安心する。
あたしは兄を馬鹿にしたやつに兄の正しさを証明するために執務官を目指した。
今もその思いは変わらないし大切にしているけど、こうして帰って来れて良かったと思う理由は
「お帰り、ティアナ。今回は長かったね、お疲れ様。ご飯の用意できてるよ」
「ただいまです、なのはさん。わざわざすみません、なのはさんも疲れているのにこんなことしてもらって」
「そんなこと良いんだよ、別に私が好きでやってるんだから気にしなくても」
そう、なのはさんが待ってくれているからだ。
なのはさんとあたしは六課の終わりの時期から付き合い始めた。
そして六課解散後は任務でよく長期間家を空けるあたしの代わりにいない間の掃除やこうして帰って来た時にはご飯を作って待ったいてくれるのだ。
あたしは、なのはさんにだって仕事や自分の家のことなどやらなくてはいけないことがたくさんあるんだからと言ったのだがなのはさんが今のように気にしなくて良いよ、と言ってやってくれている。
「……ティアナ」
あたしが色々考えている間になのはさんが何か言いたそうにこちらを見てきた。
なのはさんが何をして欲しいかはわかっているのだがあたしは恥ずかしくて躊躇してしまう。
ただ、あたしもなのはさんを感じたくてなのはさんを抱きしめ、静かに唇を合わせる。
いつもはこの後お互いに笑いあって離れるのだが今日のなのはさんはあたしを離そうとはしなかった。
あたしを抱きしめた彼女の体は何だか震えているような気がした。
「なのはさん……? どうかし「ほら、先に着替えてきて。今日は自信作だよ」」
あたしの疑問はなのはさんに遮られてしまったが笑ってくれたのでひとまずは良しとして言われた通り着替える為に部屋に向かうのだった。
彼女の作った夕食も食べ終わり、時間的にもそろそろ帰った方がいいのではないかと切り出そうとすると
「……ねぇ、今日はここに泊まっていってもいい?」
となのはさんが不安げに聞いてきた。
「あたしとしては構わないですが、大丈夫なんですか? 明日の仕事とかヴィヴィオのこととか」
「あっ、それは平気。仕事は明日は書類仕事だけでお昼過ぎからだし、ヴィヴィオは友達の家にお泊まりだから」
「そうなんですか、それなら良いんですが。……それにしても今日はどうしたんですか? 何か変ですよ?」
昨日、今日には帰れると通信したときはいつも通りであたしの報告を嬉しそうに聞いていたのに……。
「ううん、大丈夫だよ……、そんなことないから」
そう言って強がろうとした彼女をあたしは無意識に抱きしめていた。
「ティアナ?」
「あたしじゃ頼りないかもしれませんがもし何かあるなら言ってください。貴女の恋人ですから力になりたいんです」
「……あのね、夢を見たの」
「夢?」
「そう、夢。ティアナがいなくなっちゃう夢。いつまでたってもティアナが帰って来ないの。それで私は色々な場所を探すんだけどそれでも見つからなくて……」
なのはさんが話している間、ずっと無言で聞いていた。
彼女の背中にまわした腕に力を込めながら。
「実際にはこうして帰ってきてくれてキスもしたし、今も抱きしめてくれてるんだけど、もし帰って明日になったらいなくなってたらどうしようって。……こっちが現実でティアナがいなくなっちゃったのが夢なんだってわかるんだけど、もし逆だったらどうしようって」
「大丈夫ですよ、なのはさん。あたしはここにいますよ。これは夢じゃないですから」
そうしてまた彼女の名を呼ぶのだった。
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