私は朝のランニングを終え、シャワーを浴びてなのはママの作る朝食が出てくるのを待っていた。
インターミドルが終わり、その反省も生かしてまた強くなるためのトレーニングを続けている。
いつかはこの手でママを護れるようになるように。
そんなことを考えながら待っていると
“ガッシャーン“
という何かが割れる音がキッチンから聞こえてきた。
どうしたのかとキッチンを覗いてみると
「だ、大丈夫?なのはママ」
「……あっ、ヴィヴィオ、大丈夫……だよ。ちょっとお皿落として割っちゃっただけだから。……すぐ片付けてご飯にするね」
「……そんな場合じゃないでしょ。顔色悪いし、すごい体調悪そうだよ……、ほら、こんなに熱くなってる」
お皿が床に落ちて割れ、ママが調子悪そうに座り込んでいた。
すぐに近づいてなのはママのおでこに手を当てて確認するとかなり熱くなっていた。
「ヴィヴィオ……大丈夫だから……」
「何言ってるの、片付けとかは私がやっておくからママは寝てて」
でもとかまだ何か言ってるママを無視して大人モードに変身し、ママを抱き上げる。
俗にいうお姫様抱っこというやつだ。
そしてそのママなのはママを寝室のベッドに寝かせ、片付けや氷枕などをとりにいったんキッチンへ戻った。
「三十八度六分……。こんなに高熱なんて。いい?ママ、今日は大人しく寝てなきゃダメだからね」
「でも、ほらいろいろとやることが…… 」
「でも、じゃありません。なのはママのやることはしっかり休んで風邪を治すことです」
ママは仕事が……とか言ってるけど今日は休ませた。
というかこんなんじゃ仕事に行っても大したことはできないだろう。
私が何度も言い聞かせると、やっとママは静かになった。
「何か食べられる?」
「ちょっと食欲ないかな……」
「薬飲む前に軽くでも何か入れといたほうが良いから、何か作ってくるね」
「ヴィヴィオ、学校は?」
「まだ行くまで時間はあるから大丈夫だよ。ママは寝てなきゃダメだからね」
キッチンに立ち、お粥を作り始める。
全く、こんなときには私に頼ってくれていいのに。
普段から人に頼ろうとしないはわかっていたけどこんなときくらい、ね……。
私だってもう小学四年生だしママの看病くらいできるんだから。
それに普段やってもらってばかりだからこういうときくらいはゆっくりしていて欲しかった。
「ママ、起きられる?作ってきたから少しくらい食べられたら食べて」
「大丈夫だよ。じゃあレンゲかして」
ママにレンゲを渡そうとして私はふと思い付いた。
確か私が風邪を引いて熱をだしたときママはどうしてくれたっけ?
ああ、そういえば
「いいの、いいの、ママはそのままにしてて」
「……?」
「フゥ、フゥ。ほら、ママ口あけて?」
「ヴィヴィオ……、そんなことしなくても大丈夫だから。自分で食べられるから」
「ダメです。ママは体調が悪くて寝てるんだからヴィヴィオの言うこと聞いてればいいの。ほら、あーん」
「……でも恥ずかしいよ」
そんなことを言いながらもついには観念したように口をあけてくれるなのはママ。
その赤くなったなった顔を見たときに、不謹慎ながらかわいいと思ってしまった。
食事も終わり、私は大人モードを解き学校へ行く支度を終え再び寝室を訪れた。
「じゃあ、学校行ってくるからちゃんと寝てるんだよ」
「わかりました。今日はヴィヴィオのいう通りにします」
その言葉を聞き学校へ行こうとした私だったが、ふとしたことをまた思い付いた。
風邪は他の人にうつすと早く治るっていうよね……
部屋を出ようとしたところで戻ってきた私を不思議に思ったのかママがどうしたのか聞いてくる。
私はそんなママに返事をせずに
「チュッ」
なのはママの口にキスをした。
「……ヴィ、ヴィヴィオ?」
真っ赤な顔で私を呼んでいるママには答えずに私はそれ以上に顔を赤くして部屋を飛び出した。
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