「やっと見つけた」
あたしはさやかを探し回り、駅のホームで見つけた。
さやかをあいつ、暁美ほむらから逃がしてからずっと探していた。
「あんた、いつまで強情張ってる気?」
「悪いね、手間かけちゃって」
こいつが、さやかがあたしにそんなことを言うなんて意外だった。
「な、なんだよ。らしくないじゃんかよ」
「うん、別にもうどうでもよくなっちゃったからね」
そう言ったさやかの目は濁っていてこの前協会であたしに反論してきたときとは全然違っていた。
さやかのソウルジェムは黒く穢れていて早くなんとかしないといけない状態だった。
「あんた、ちょっとそれ貸しな」
「……ちょっと、あんた何するのよ」
言うのが早いか、あたしはさやかの手から素早くソウルジェムを奪い取り、持っていたグリーフシードを使ってそれを浄化し始めた。
だけど、穢れをため込みすぎたそれはグリーフシード1つでは綺麗に出来ず、他のグリーフシードを使うことにより、ようやく浄化することが出来た。
「ちょっと勝手なことすんなよ」
あたしのあまりの速さに手がでなかったのかさやかがそんなことを言ってきた。
あたしはさやかの言葉には答えず、だまって手を引っ張りその場を後にした。
「あんたさ、あたしをこんな所に連れてきてどうしようって言うの?」
あたしがさやかを連れてきたのは自分が現在暮らしているホテルの部屋だった。
ソウルジェムは綺麗になったとはいえ、こんな状態のさやかを一人にするわけにはいかないし、そのまま家に帰すのもその後どうするかわからないので取りあえずここに連れてきたのだ。
「あんたさ、この前言ってたじゃんか。自分の信念を貫くって。他人の為に祈ったことを後悔しないって……」
そう、あたしはさやかのその言葉を聞いたときに素直に凄いと思った。
たった一度の奇跡を他人の為に使い、じぶんが人を護るんだという姿は昔の自分を見ているようで。
家族の為に願いを使い結果、家族を壊してしまったあたしの話を聞いても引かなかったさやかを見て昔のあたしがいると、そう思った。
「だって、もう自分が何の為に戦ってるのかわからないんだもん。あたしはいったい何の為に願ったんだろうって……」
未だに目に光が戻っていないさやかがポツリとつぶやいた。
「あんたはさ、その坊やに恩を感じてほしくて願いを使ったのかい?それとも自分がその坊やのことを思ってその為に奇跡を使ったのかい?」
「……マミさんにも魔法少女になる前に似たようなこと聞かれたよ……。その後、契約したときは、恭介の役に立ちたい、恭介の怪我を治したいと思ってたんだけど……」
「まあ、人間誰しも自分がやってきたことに疑問を持つこともあるし、何でこんなやつの為に自分がってこともあるさ。でもさ、自分が本当に願ったのが何なのかをもう一度考え直すことも大切なんじゃないかな?」
「アンタ……」
「ほんとのこと言うと、あたし、さやかのこと凄いって思ったんだ。自分はあの日から自分の為にこの力を使うようにしてきた。でもあんたはそれでも人の為に力を使うと。そんなあんたを見てて最初はイライラしたけどさ、昔の魔法少女になった頃のあたしを見ているようで。だからそのことを思い出させてくれたさやかには感謝してるんだぜ」
「……あんたにそんなことを言われると何か変な気分だわ……」
そのとき、やっとさやかが笑ったような気がした。
「ありがとう、あんた……杏子のおかげでどうすればいいかわかった気がする」
やっと、こいつ、さやかとの距離が少し縮まったような気がした。
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