「どうしたんですか、なのはさん?」
「……」
「あの言ってもらえないとわからないんですけど……」
「……」
……参った、何が参ったのかいうとさっきからなのはさんが怒っているのか話しかけても全然応えてくれないからだ。
知らない内に何かまずいことでもやってしまったのだろうか……。
今日はなのはさんと休暇が重なったので、さっきまで一緒になのはさんの実家の喫茶店の手伝いをしていたのだ。
「ティアナ、これ3番テーブルに持っていてくれる?」
「わかりました」
「すまないが、一緒にこの水をあちらのお客様に届けてもらえるか?」
「了解しました」
こんな感じで頼まれたものを運び終えた後にも
「すみません、オーダーいいですか?」
「はい、かしこまりました」
「店員さん、次こっちお願いします」
とあたしもフロアに入って手伝いをしていたのだが、最初の方は特に変わったことはなかったのにお昼時になって少ししたらなのはさんの機嫌が悪くなってきてしまったのだ。
初めての経験だったのでミスしないように気をつけていたのだけど、やっぱり何か失敗してしまったのだろうか?
「なのはさん? あたし、やっぱり何かミスしてしまいましたか?」
「……ううん。ティアナは全然ミスしてないよ。手際も良かったし、お母さんたちも凄く助かったって言ってた」
「じゃあ、何で怒っているんですか?」
「……別に怒ってないよ。ただ……ティアナは何処でも人気があるんだなって思って……」
……はいっ?
なのはさん、今何と言ったんですか?
あたしはなのはさんが言ったことが全く理解できずになのはさんに問い返してしまった。
「あの……、仰っている意味がわからないんですけど」
「だって、お客さんみんなティアナのこと見てたし、オーダーのときもみんなティアナに声かけるし……」
「……、あの……そんなことはないと思いますけど。それにもしそうだとしても、あたしが多く呼ばれたのは注文するときにちょうど近くにいたからとかそういう理由でしょう?」
「そんなことない。みんなティアナと話したくて呼んだんだよ。注文終わったあとも楽しそうに話してたし」
「別に楽しそうになんて、ただ世間話を少ししていただけで」
「それにそれだけじゃないよ。……向こうでもティアナのこと気に入ってるお偉いさんとか結構いるんだよ。後、新人の中にも私とティアナが一緒にいて別れた後にティアナのこと聞いてくる子とかもいるんだから」
……それに、ティアナの後輩の執務官がティアナを食事に誘ってるの何回も聞いたし、っと最後の方は小声で言うなのはさん。
色々と思うことはあるが、……それよりも
「もしかして嫉妬してくれたんですか?」
「そうだよ、ティアナは私の恋人なのに。……ごめんね、こんなこと急に言われても困っちゃうよね」
そんなことを言いながら紅くなり俯くなのはさん。
なのはさんがそんなことを思っていたなんて。
確かにあたしたちは恋人同士だが、あたし自身まだなのはさんの横に立つには相応しくないと思っている。
だって彼女の周りには彼女を好きで凄い人が沢山いるから。
だからあたしなんかはいつか別れを切り出されるんじゃないって。
でもなのはさんがそんなにあたしのことを想っていてくれているのなら。
あたしはそんな彼女を優しく抱きしめた。
「……ティアナ」
「なのはさん」
腕の中で顔をあげた彼女にあたしはそっとキスをした。
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