「雪穂のお姉さんってスクールアイドルやってるでしょ?」
「うん、やってるけどどうかしたの?」
「私たち貴女のお姉さんのファンなの。だから出来たら貴女からお姉さんに言ってサインもらってきてもらえない?」
あぁ、まただ。
お姉ちゃんがスクールアイドルを始めてからは何度もするようになった会話。
お姉ちゃんのファンの子がお姉ちゃんのサインが欲しいとか、お姉ちゃんと会わせて欲しいと私に言ってくるのだ。
「雪穂のお姉さんってかっこいいよね」
「そうそう、歌もダンスも上手いしねぇ」
……かっこいい?お姉ちゃんが?
そりゃ、μ'sで歌って踊ってるときの姿は多少はかっこいいと思いはするけど、海未ちゃんや絵里さんの方がかっこいいと思うし、普段のだらしないお姉ちゃんを知っているととてもじゃないけど同意はできないかな。
「ただいまぁ」
「お帰り、お姉ちゃん。今日は早かったね」
「うん、今日は練習がお休みだったからね、早く帰って来れたんだぁ。あ、そっちの子たちは雪穂の友達? いつも雪穂がお世話になってます」
「いえ、こちらこそいつも雪穂には仲良くしてもらってます」
「それで……その……お姉さん、いつも動画見てます。もしよろしければ、サイン下さい」
「えっ? サイン」
「この子たちお姉ちゃんのファンみたいなの。だから今日連れてきたんだけど」
「そうなんだ、嬉しいなぁ。海未ちゃんや真姫ちゃんはよく出待ちとかされるみたいだけど、私そういうの全然ないから私のファンなんてほとんどいないのか思っててさ……、あっ、ごめんごめん、サインだったね。もちろんOKだよ」
「ありがとうございます、これからも頑張ってください、応援してます」
嬉しいよと言いながら私の友達にニコッと笑いかけて抱きつくお姉ちゃん。
「あぁ、穂乃果さんに抱きしめられてる……幸せ」
……何さ、あんなだらしない顔しちゃってさ。
あんな風にすぐに誰にでもくっついたりして、そんなんだから私がいつも苦労するんだよ。
そりゃあ、ファンサービスが大事っていうのはわかるんだけどさ。
やっぱり連れて来ない方が良かったかなぁ。
穂乃果は私のなのにさ。
「雪穂?」
「ねぇ、雪穂? さっきから何か変だよ?」
「別に変じゃないけど。ただ、せっかくファンの子が来たのにあんなだらしない顔しちゃってバカみたいって思っただけ」
「酷い! バカって何?」
「あんな風に抱きついたりして勘違いされでもしたらどうするの?……大体穂乃果は私という者がありながらあっちこちにフラフラしすぎだよ。そのせいでμ'sのメンバーを始めまだ諦めてない人がどれだけいるか」
「あっ、もしかして雪穂ヤキモチやいてくれてるの?」
「なっ!? そうだよ、悪い? だって恋人である私の前であんな風に他の子に笑いかけて抱きついたりして、穂乃果にその気がないのはわかってるけどやっぱり見てると不安になっちゃうんだよ」
「大丈夫だよ、私がそういう意味で好きなのは雪穂だけだよ。こういうことをしたいって思うのも雪穂だけだから」
そう言って私を抱きしめながら唇にキスを落としてくるのだった。
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