「……真姫ちゃん、私たちもう別れよう」
「えっ? それってどういう意味?」
「何かさ、真姫ちゃんといても楽しくなくなっちゃったっていうかさ、本当に真姫ちゃんのこと好きなのかぁって思っちゃったからさ。真姫ちゃん、何考えてるかわからないときあるし」
そう言って私から離れていく穂乃果。
私は必死に穂乃果を捕まえようと後を追いかけるが彼女はどんどん遠ざかって行った。
「穂乃果、待って、ほのかぁ」
「……夢? さっきのは夢だったの?」
目を覚ましたらそこは自室でさっきのは夢だということが理解できた。
何であんな夢をみてしまったのかしら、そう思いながらも時計を見るともうそろそろ準備をしないと穂乃果との待ち合わせに間に合わない時間になっていた。
「遅い」
……待ち合わせの時間から30分以上経ってるのに何で来ないのよ。
そもそも今日の初詣だって穂乃果の方から誘ってきたのに……。
携帯に連絡しても出ないし。
もしかして、あの夢のように本当に穂乃果に捨てられてしまったのではないかと思ってしまう。
まさか、穂乃果に限ってそんなこと、そんな風に考えていると
「まっきちゃーん、ごめんね、ちょっと寝坊しちゃって」
「全く、そっちから誘っておいて遅刻なんて。遅れるなら遅れるで連絡くらい入れなさいよね。こっちからのは出ないし」
「いやぁ、連絡入れようとおもったんだけど、携帯の充電が切れちゃってて……」
ごめん、ごめんなんて言いながら頬をかく穂乃果。
そんな彼女を見たら、あぁ、いつも通りの穂乃果だって安心した。
「本当にごめんね。真姫ちゃん、その着物似合ってるよ、凄く可愛い」
「……何言ってるのよ、そんなこと言ったって駄目なんだからね」
本当は嬉しいのに素直になれない私。
「穂乃果こそ似合ってるわよ」
「えへへ、ありがとう、真姫ちゃん。それじゃあ、そろそろ行こっか」
そう言って差し出された彼女の手を取って私たちは歩き出した。
神社の境内には屋台もいくつかあってあっちへふらふらこっちにふらふらしている穂乃果。
「全く、せめてお詣りが終わってからにしなさいよね」
「まあまあ、ちょっとだけだから」
いつの間にか買って来た物を食べ始める穂乃果。
彼女の行動力はすごいというか、何というか……。
「そうだ、私だけ食べてるのも悪いし真姫ちゃんにもあげる」
先ほどまで自分で食べていた物を差し出す穂乃果。
ちょっと、これって……じゃない。
「ほら、真姫ちゃん、早く早く。冷めないうちに食べた方が美味しいよ」
彼女の差し出した物に口をつけた私はとても顔が真っ赤だったと思う。
自分でもわかるくらい顔が熱かったんだから。
「そういえば、真姫ちゃんは何をお願いしたの? 随分と長い間お祈りしてたけど」
神社からの帰り道、ふと思い出したように穂乃果が聞いて来た。
「……朝ね、夢を見たの……」
「……夢? どんな夢だったの?」
「穂乃果に捨てられる夢。私は素直じゃないし、何考えてるかわからないって。私よりもことりの方が良いって言って離れていったの……」
私が夢の内容を語り終わると穂乃果はしばらく黙っていたが、
「……何、それ? どうしてそんな夢見るの? 私は真姫ちゃんのこと大好きだよ。そりゃあ、もう少し甘えて来て欲しいなぁとか、もう少し素直だったらとか思うこともあるけど、そういうのも含めて私は真姫ちゃんが好き。ことりちゃんも友達だし好きだけど真姫ちゃんに対する好きとは全然違うよ。私は真姫ちゃんと一緒にいれるだけで嬉しいし、ドキドキする。もっと一緒にいれたら良いなって思ってるよ」
穂乃果の言葉を聞いて頬に涙が伝うのを感じた。
何であんな夢を見たんだろうって、こんなにも好かれているのに。
「真姫ちゃん、私は今怒ってます。私の好きは伝わらなかったのかなって」
だから、
そう言って私にキスをする穂乃果。
「これからはもっと積極的に伝えていくから覚悟しておいてね」
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