「まきちゃん、まっきちゃーん」
「……ちょっと、大声で呼びながらいきなり抱きついてこないでっていつも言ってるでしょ」
本当は穂乃果に抱きつかれるのは嬉しい、穂乃果にもっと名前を呼んでほしい、そう思っているのにどうしても素直になれない。
「だって部室に向かってたら真姫ちゃんを見つけたんだもん。一緒に行こうと思ってさ」
「だったら普通に言えばいいでしょ? 何でだきついてくるのよ?」
「真姫ちゃんを見つけて嬉しかったんだもん。私は真姫ちゃんのこと好きだよ。真姫ちゃんは私のこと好き?」
穂乃果は何がいけないの?、と言う顔で見つめてくる。
好き、彼女からその言葉を聞くたびに勘違いしてしまいそうになる。
穂乃果も私と同じ気持ちなんじゃないかって。
穂乃果の好きと私の好きはきっと違うのに。
穂乃果の好きはきっと友達としてとか同じμ'sのメンバーとしての好きだと思う。
でも私の好きは……。
「……そうね、嫌いじゃないわ。でも穂乃果とは違うわ」
"ガチャ"
何だかんだで穂乃果にくっつかれたまま部室に着くと私たち二人以外はもうみんなそろっていた。
「あんたたち、遅いわよ。一体何してたのよ? ライブまで後ちょっとなのよ」
「ごめんね、にこちゃん。そんなに怒らないで、すぐに準備しちゃうから」
「ちょっと、そう言いながら抱きついてこないでよ。早く準備しなさい。暑苦しいからとっとと離れろ」
私から離れてにこちゃんに抱きつく穂乃果。
そう、穂乃果は私だけじゃなく他のメンバーにもよくくっついているし、好きと言っている。
穂乃果のそれはスキンシップやコミュニケーションにしかすぎないとわかっている。
でもいつか穂乃果の特別な存在になれたらいいのに。
その元気な笑顔をもっと私に向けてほしいって思うのはわがままなのかしら。
「真姫ちゃん、穂乃果ちゃんが離れて残念そうな顔してるにゃー」
「凛なに言ってるのよ。私は別にそんな顔してないし……」
「そんな顔で言っても説得力ないにゃ」
凛にからかわれていると
「真姫ちゃん、ちゃんと言わないと穂乃果ちゃんには伝わらないよ?」
「そうですよ。特に穂乃果はそういうことには鈍いですから」
ことりと海未の二人に小声でそう言われた。
彼女をずっと見てきたの幼なじみの二人がいうのだから相当なのだろう。
それに告白してもし断られたりしたらもう元の関係には戻れないかもしれない。
告白して恋人同士になりたいという気持ちの他に、今のままで……この友達として好意を向けられているこの状況でもいいんじゃないかと考えてしまう自分もいる。
「ほら、全員準備が出来たみたいだから屋上に行くわよ」
絵里の一声で今日の部活がはじまったのだった。
PR